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2025/11/26

重機と純愛

掘削機械をかかえた重機が 

涎をたらしてやって来る

秩序としての建物を

たたきつぶす純真がある

海辺で水着姿の男女が飲むカクテルが 

もう機械油

帰るホテルはないと海に身投げするも 

工事現場の土砂があるだけ 

うなずいて夏が閉じ 秋のない冬が来て 

すべてはコンクリの下で眠った

2025/11/21

日記帳

物干し場から屋根にのぼり
日記帳をかじれば
血の味がする

洗濯物のように
思い出がはためくのを見ても
心は化石のようだ

指先にとまった天道虫と
すみやかに同化する
そのなめらかな邂逅

浮沈する思考を
一気に粛清していく
巨大な白刃のひらめき

脳裏にあいた風穴から
密かに粘液が入りこんだとしても
思い出が難なく弾き返してしまう

2025/10/20

秋日一葉

古い木の黄葉と落葉
を切り取っている窓辺
木机に置かれた手紙の
封を切れば
ふわりと先生の面影
文字は声になって響く

旧校舎の二階だった
板書する小気味よい音
教本を開いては
手首で型をつける
背表紙が教壇にあたって
カタッと硬い音を立てた

チョークの白と
先生の豊かな白髪は
とても近いとふと思う
手は鉛筆を持ったまま
宙で止まっていた
そのノートの白さもまた

窓の隙間から猫が顔を
のぞかせたので
あの日を追っていた
自分の心に気づく
猫に言い訳をしたい

また一枚の落葉

象と布団

ベランダの象が
寝返りを打つたびに
アパートが瓦解していく
絶望感
長くはもたないだろう

まだ世界としてある布団に
深く潜ったまったまま
ゆっくりと床が落下していく
重力感
このまま落ち続けたい

雨戸を開ければきっと
暖かな日が差しこむはず
だがもう手は届かない
伸ばしたい手もない
闇から無闇へ漂うだけ

夜の雨がつくった海原で
布団がじっとりと重たい
象は寝息だけでそこに在る
硬い皮膚を折り曲げて
空を飛ぶ夢を見ている

2025/05/26

台所で待っている

台所で包丁の先から
孤独がしたたっている

浴槽で2人寝ている
たくさんのバラが散って
赤い床がきれい

冷蔵庫には3人冷えている
かんたんな日曜大工
Do it your self だ

天国だって改造すれば
地獄になる

憎悪のいちばん美しい
弾丸をこめる
やさしい瞳にとどめを刺すため

濡れた髪も思いも二度と
溶けることのない絶対零度へ

玄関はいつだって
開け放してある
おまえのために

2025/02/18

バスに乗せて(脱詩つき)

バスが地図の真ん中を割いてやってきた
車輪はもうもうと燃え上がり乗客は影だ
車掌が割れた窓から腕だけで名前を引きちぎる
自分の名前を乗せてバスは出発した
忘却曲線を強引に暴走して消える

あとは
名前をなくした自分とバス停
むなしい形骸、胃痙攣
無銭飲食しながら 胃は食堂に捨ておく

早逃げの足もないが呼ばれる名もない ただ
骨の可動域が人形のようにガクガクとして
わびしい

埋めこまれた悲しみは暴力で吐き出すしかない
全部が好きだったはずのきのうに戻れない
輪郭だけでは生きれないから


(以下は脱詩*したバージョン) *脱詩する(depoetise)=リリシズムを排し、断片化・先鋭化する

衆人車両は破、地図まっぷ断つ
劫火、豪豪快快 影るる人々
粉砕す、ガラす、窓から出腕 ひっつか名み
衆人車、出っ発おん名ままそ
のカーブ強滑走、残おん音
後背

な無名名者=己おつかつ停場場|棒、粛々ナン
奇々して気が餓鬼の飢餓 胃が歪捻、微々しびれ転
虚貨幣空無、直・逃走せ足無明、無名、解 ゆい
かこつ骨コツ無く泣く、慨々ろう
虚弱輩
内臓内酷悪惨時、憤怒噴出が独希
まったくも全、方、好々や得たが否認悲行
沿う線、
不身体不形態そくて無生むたく