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2025/10/20

秋日一葉

古い木の黄葉と落葉
を切り取っている窓辺
木机に置かれた手紙の
封を切れば
ふわりと先生の面影
文字は声になって響く

旧校舎の二階だった
板書する小気味よい音
教本を開いては
手首で型をつける
背表紙が教壇にあたって
カタッと硬い音を立てた

チョークの白と
先生の豊かな白髪は
とても近いとふと思う
手は鉛筆を持ったまま
宙で止まっていた
そのノートの白さもまた

窓の隙間から猫が顔を
のぞかせたので
あの日を追っていた
自分の心に気づく
猫に言い訳をしたい

また一枚の落葉

象と布団

ベランダの象が
寝返りを打つたびに
アパートが瓦解していく
絶望感
長くはもたないだろう

まだ世界としてある布団に
深く潜ったまったまま
ゆっくりと床が落下していく
重力感
このまま落ち続けたい

雨戸を開ければきっと
暖かな日が差しこむはず
だがもう手は届かない
伸ばしたい手もない
闇から無闇へ漂うだけ

夜の雨がつくった海原で
布団がじっとりと重たい
象は寝息だけでそこに在る
硬い皮膚を折り曲げて
空を飛ぶ夢を見ている